大和ハウス工業は技術革新のため、連携主体の BIM 構築とデータ活用による生産性向上を進めてきました
大和ハウス工業は技術革新のため、連携主体の BIM 構築とデータ活用による生産性向上を進めてきました

2017年のBIM全社導入:最後尾からのスタート

2025年に創業70周年を迎えた大和ハウス工業は、その社名が示すように設立当時から工業化に取り組み、1959年にはプレハブ住宅の原点となるミゼットハウスの供給を開始するなど、常に先進的な取り組みを行なってきました。その一方で、スーパーゼネコンを凌ぐ事業規模にまで成長を遂げた同社がBIMの全社導入に踏み切ったのは2017年。その取り組みは、日本のBIM元年とされる2009年から大きく遅れて始まりました。

BIM先進国である英国では、2016年には既に全ての公共物件において、各専門分野のBIMモデルが管理され、互いに参照・共有されるBIMレベル2の利用が義務付けられていました。この時点で存在していた先進国と大和ハウスとの間の圧倒的な差は、その後急速に縮まることになります。

2017年以降、大和ハウスはBIM標準として、テンプレートの作成、部品のファミリーの準備などを、オートデスクの支援のもと次々と実行。設計分野では意匠、構造、設備のBIMを統合し、そのデータを次工程の見積や工場、工事で活用する「連携型BIM」の実現を強力に推進しました。

技術本部技術戦略部1室 室長の宮内尊彰氏は、「まずは2年で、構造のBIM実施率100%を達成しました。達成率を上げていくことで次々と新しい目標が見え、やがてBIMレベル2が必要な理由にも納得が行くようになりました」と、BIM推進を行った当時を振り返ります。「オートデスクとパートナーシップを組み、海外の先進的な顧客を訪問して議論したことなどが教科書になり、さらに上の世界まで行けると感じられるようになりました」。

BIM実施率の向上のため、大和ハウスでは単にテクノロジーを用意するだけでなく、それが実際に活用されるよう、プロセスに合わせた展開が行われました。その結果、2024年度には建築系でのBIM移行率が、設計分野の意匠、構造で100%、設備では87%になったのに加えて、見積95%、工場100%、工事50%にまで向上。現在は商業施設、事業施設の設計でBIM移行率100%を達成しています。

大和ハウス工業 技術戦略部技術戦略第 1 室長 宮内 尊彰 氏
大和ハウス工業
技術戦略部技術戦略第 1 室長
宮内 尊彰 氏

BIMの連携で目指す建設業の未来

大和ハウスでは連携主体のBIM構築に続いて、2019年7月にはデータ活用による生産性向上も始動。この2つのテーマのもと、建設のデジタルデータを「作る、ためる、活用する」ことに取り組まれます。そして技術向上のため導入されたBIMが、建設業の未来を実現するためのデジタル戦略においても、非常に重要な役割を果たすことになります。

宮内氏は、BIM標準の策定、定着を実現した「導入期」を経て、現在はデータの「活用期」へとフェーズが移っていると語ります。その中で掲げられたデジタル大和ハウス構想は、デジタルデータを中心にプロセスが回り、そこで生まれたデータがさらに新たな価値を生み出していく未来の姿を目指すものです。「現在は、年間で企画設計4,000件、実施設計900件のデータが、CDEであるAutodesk Construction Cloudに保管されるようになりました。こうして貯まってくるデータを、どんどん活用していこうと考えています」。

この活用とは、単純にBIMで図面を描くだけではなく、そのデータが設計から施工に渡ってデジタルコンストラクションで活用され、見積、さらに製造や維持管理などで使われた結果がフィードバックループとなって次のプロジェクトへ生かされていくことを意味しています。「こうした建設プロセスにおけるデジタル戦略のメビウスループで、建設DXを実現しようと考えています」と、宮内氏は続けます。

「例えば意匠で作った外壁や屋根などのデータが見積に渡り、見積はデータから数量を拾うというように、BIMを連携して、そのデータを徹底的に使おうとしています。また施工においては、施工図になるような施工BIMデータを作ったり、現場でデジタル測量とBIMを連携させたりなど、それぞれを連携しながらどんどん成熟させています」。

施工に必要なデータは、設計段階と比べると高い詳細度が求められるため、設計BIMと施工BIMの間には大きな開きがあると宮内氏は語ります。「その一方で修正・調整に必要な時間は、発注前の施工段階になると設計段階の2倍増、発注後はさらにその2倍+やり直しコストが発生するため、なるべく早い段階での修正が望ましいことは明確です。BIMデータ連携により可視化することで、設計と施工それぞれの役割の決定・確認が可能となり、プロジェクトをより効率的に進められるようになります」。

BIMのさらなる活用:TRUSS、ICT

BIM基盤の構築からデータ活用への発展に伴い、大和ハウスの建築系BIMにおいて、さまざまなソリューションへの取り組みが行われています。メーカーを横断した建材検索のソリューションとして開発されているTRUSSは、例えば縦軸に断熱性能、横軸に設計単価を取り、メーカーを横断した建材の検索、決定を行うことができます。

「メタバースプラットフォームである南国アールスタジオのWHITEROOMテクノロジーを使い、TRUSSでの建材選択をバーチャル空間で実行できるようになってきています」と、宮内氏は説明します。「バーチャル空間の中で、例えば床材料の変更を行い、お客様と意思疎通をしながら選択することが可能になると思います」。

さらに、設計時にBIMデータを使ってアップフロントカーボンなどの数量を算出するツール開発にも取り組んでいます。「オートデスクと取り組んでいるICT (Integrated Carbon Tool) は、構造計算のデータとRevitによる設計BIMにあるデータを取り出して、アップフロントカーボンをシミュレーションするツールです」。

建築系BIM活用の広がり
建築系BIM活用の広がり

デジタルとフィジカルの融合で建設業界の未来を見据えた次世代工業化への挑戦

大和ハウスが思い描くのは、設計段階でBIMを使った自動設計を行い、製造工場はそのデータを使いながら効率よく物を作り、それがジャストインタイムで運ばれ、また建設現場を他の場所からも管理することが可能となる、未来の建設業の世界です。

現在、大和ハウスでは約5,000名の社員がBIMを活用しており、協力会社なども含めて約15,000名がAutodesk Construction Cloud環境で業務を行っています。「大和ハウスはBIMとデータをつなぎ、ビジネスバリューを生み出す仕組みとしてコンフィギュレーターを構築しています」と、宮内氏は説明します。

「目指しているのは、単なる建物の形が生成される仕組みではなく、ライフフサイクル全体でデータが連携する次世代のコンフィギュレーターです。コンフィギュレーターを動かす源であるデータの成熟度を向上させることで、コンフィギュレーター自身の性能が向上し、対応できるスコープも拡大することができ、さらなるビジネスバリューの創出につながります。このコンフィギュレーターは、データの成熟度向上とともに進化し続けます」。

こうした数々の取り組みにおいて、宮内氏は「現時点で、自分たちが目指していること全てを実現したとは思っていません」と語る一方で、確かな手応えも感じていると言います。「まだ途中ではありますが、徐々に進めてきたことの成果が少しずつ見えてきている。現時点では、まだコンフィギュレーターの実現には足りないピースがありますが、あと何を用意すればインプットの要素が揃うのかは見えている。向かうべきところはクリアに見えていると感じています」。

宮内氏が見据えるのは、デジタル大和ハウス構想の先にある、新しい形の工業化です。「これまで大和ハウスが行ってきた住宅の工業化は、モノづくりをよりスマートに、早く行うという大量生産でした。市場が変化していく中で、私たちは、従来の工業化を再考し、多様性や対応力を持った次世代の工業化にオートデスク社と協働で取り組んでいます。従来の工業化とは評価指標も変わっていくのではないかと。地球の持続可能性を念頭に、環境やコストなども含めた改革を実現したいと考えています」。

これを受けてオートデスク アカウント営業部 副本部長 戦略担当の稲岡俊浩は、次世代工業化の先にある建設業の未来について言及します。「これは現在の建設方法をドラスティックに変えることでもあります。BIMをベースとしたデジタルデータが新たな価値を生み出す世界は、各社の努力で辿り着けると思います」。

「そこにサプライチェーンまでを含めた新たな工業化を社会全体で実現していくことができれば、現在の建設業が抱える様々な課題――労働力不足、生産性の低さ、資材高騰、大量の廃棄物や二酸化炭素排出など――を解決していくことができるのではと考えています。そのためには、業界の枠組みを超えたスケールの大きな取組みが必要になるだろうと思います。そうした活動の一端を、私たちが担っていければという思いを持って取り組んでいます」。

大和ハウス工業が目指す建設業の未来
大和ハウス工業が目指す建設業の未来