準大手ゼネコン 9 社が参加
準大手ゼネコン 9 社が参加

設計から施工につなぐ流れつくる/整合性とれたモデル引き継ぐ

「現場が始まる前に対処しなければいけない」。そう強調したのは戸田建設の田伏雅樹建築工事統轄部建築生産企画部フロントローディング推進課課長だ。BIM データ活用の先進事例をテーマにしたパネルディスカッションに登壇し、フロントローディング推進課が設備や鉄骨のモデルを統合し整合性などの課題を解決した上で、生産設計部門に設計 BIM を引き継ぐ「BIM データの中継ぎ役」として活動していることを説明した。

戸田建設は、意匠と構造のモデルを BIM ソフト『Revit』、設備モデルを別ソフトで作成しており、建設クラウドプラットフォーム『Autodesk Construction Cloud(ACC)』上で統合モデル化している。実施設計の段階からフロントローディング推進課が参画することで、施工の知見を設計側にも共有する流れをつくっている。「整合性の取れたモデルを引き継ぐことが、施工段階での効果的な BIM データ活用につながる」と語った。

戸田建設が目指すBIMデータの一貫活用
戸田建設が目指すBIMデータの一貫活用

「当社が取り組もうとしている流れと一致している」。登壇した安藤ハザマの斉藤正和建築事業本部 BIM 推進部長も戸田建設の考え方にうなずく。その中で課題に感じている 1 つが「統合モデルの詳細度をどこまで突き詰めていくか」という点だ。例えば鉄骨ファブリケーターは自前の納まりを優先する場合があり、鉄骨モデルの通りに制作が進まないケースもある。「モデル精度レベルをあらかじめ決めなければ、時間も労力も無駄になってしまう」と続けた。

安藤ハザマでは、設計モデルから図面を出力するモデル先行の流れを確立しようと取り組み始めている。意匠、構造、設備を同時並行で進めるアジャイル型の BIM 設計に取り組み、それを ACC 上で共有している。「CDE(共通データ環境)を確立し、リアルタイムに情報を共有しながら、設計プロセスのコミュニケーション密度を高めることで、整合性の取れたモデルを施工に渡すことでき、それが生産性を向上させる基盤になる」と強調した。

「整合性の取れた正しいデータをつくることが何よりも大切」と同調したのは、西松建設の濱岡正行建築事業本部デジタルコンストラクションセンター長だ。BIM を軸に提案型のフロントローディングに取り組む上で「より早い段階からモデルを確定していくことが重要になってくる」と付け加えた。「西松 DX ビジョン」ではスマート現場のロードマップを掲げており、その実現には「基盤となる BIM データが必要不可欠」と訴えた。

西松建設も、戸田建設や安藤ハザマと同様に ACC上でデータの統合や共有を進めている。ゼネコンの強みである設計施工一括の生産プロセスに BIM を導入する際、準大手各社は設計から施工へのデータ連携を確立することを重点テーマの 1 つとして位置付けている。アプローチの仕方は企業ごと異なるものの、共通して取り組むのは CDE 基盤を構築し、整合性の取れたモデルをきちんと引き継ぐことだ。設計から施工につなぐ流れを整えようと各社は一斉に動き出している。

(左から)斉藤氏、田伏氏、濵岡氏
(左から)斉藤氏、田伏氏、濵岡氏
西松建設のスマート現場へのロードマップ
西松建設のスマート現場へのロードマップ

現場ノウハウ蓄積し AI に展開/付加価値見据えプロセス確立

準大手ゼネコン 9 社の BIM 推進担当が勢ぞろいしたオートデスクのラウンドテーブルには、施工現場への BIM データ活用を促進しようと、まい進する準大手各社の前向きな姿が映し出された。スマート現場の実現に向けてロードマップを掲げる西松建設の取り組みは、オートデスクの建設クラウドプラットフォーム『Autodesk Construction Cloud(ACC)』を基盤に BIM データ活用を推し進める先行事例の 1 つだ。

2022 年に策定した「西松 DX ビジョン」は現在バージョン 2.2 となり、デジタル技術の進歩と自社のデジタル活用フェーズの進捗に合わせ、着実に進化させてきた。施工管理の DX(デジタルトランスフォーメーション)では業務をデジタル化しながら作業の未来を予測するような施工管理の実現に向けて取り組み、施工段階では作業の遠隔化や自動化、鉄骨ファブリケーターとの生産連携も含め、より現場が効率化できるような流れにシフトしていく。

パネルディスカッションに登壇した西松建設の濱岡正行建築事業本部デジタルコンストラクションセンター長は「実は施工管理情報の一元化にもチャレンジしている」と明かした。興味深いのはACCの施工管理系ソフト『Build』を活用し、ベテラン技術者のノウハウを集め、若手に共有しようとしている点だ。現場所長や積算担当、計画担当などが図面などを見ながら、検討時期のタイミングや具体のアクションなど気が付いたことをメモとして共有する試みを進めている。「まだ 1、2 現場で取り組んでいる程度だが、将来的に多くのノウハウが ACC の中に蓄積することができれば、AI(人工知能)との連携にも発展させていきたい」と先を見据えている。

濱岡氏と共にパネルディスカッションに登壇した安藤ハザマの斉藤正和建築事業本部 BIM 推進部長は「熟練所長の技術伝承はわれわれも重点テーマの 1 つに位置付けている」とした上で、「そのノウハウを構造化データとしてきちんと蓄積していくことが有効になってくる」と語った。戸田建設の田伏雅樹建築工事統轄部建築生産企画部フロントローディング推進課課長も「社として現場のノウハウをエクセルなどに蓄積しているが、構造化データとして残すことができれば、AI への展開も可能になる」と続いた。

戸田建設では、3 つの DX を掲げ、営業段階から設計、施工、維持管理に至るまで、一貫した BIM データの活用に乗り出し、生産性の向上とデータドリブンの確立に結び付け、既存事業の変革に取り組んでいる。ラウンドテーブルに参加した建築DX推進室の鈴木隆史室長は「BIM に最適化された業務プロセスの確立が目的の 1 つになるが、その先にある付加価値の部分を見据えながら取り組むようにしている」と説明した。

設計と施工に一貫して取り組むことはゼネコンの強みだが、BIM データを次工程にもつなぐ部分は各社とも苦戦を強いられているのが現状だ。設計から施工へのデータ連携が難しいのはデータ共有のシステム的な部分だけではない。「データを連携していく前に、人と組織をつないでいくことが近道になる」と続けた。

近年の準大手各社では BIM データ活用の進展を背景に、より円滑な社内連携ができるように組織の再構築が広がっている。これは、まさに円滑な BIM データ連携が実現できる組織づくりを常に追求している動きに他ならない。

戸田建設、西松建設、安藤ハザマの事例ベースに意見交換
戸田建設、西松建設、安藤ハザマの事例ベースに意見交換

フロントローディングの流れ確立へ/最適な組織模索の動き相次ぐ

準大手ゼネコンのラウンドテーブルには、安藤ハザマ、奥村組、鴻池組、高松建設、鉄建建設、東洋建設、戸田建設、西松建設、三井住友建設の BIM 推進担当が参加した。主催したオートデスクの羽山拓也技術営業本部長が「BIM を軸にした業務プロセス改革を進める中で、多くのゼネコンが関連部門に横串を刺す組織を置いている」と説明したように、意見交換では準大手各社が BIM データ活用を進めていく上で、最適な組織とは何かを模索し続けている状況も浮き彫りになった。

安藤ハザマは今年 4 月に設計、設備、施工の各部門をつなぐ組織として建築事業本部の中に BIM 推進部を発足した。以前、集約していた BIM 推進担当を各部門の推進役として配置したが、それを再構築した形だ。西松建設では 2024 年 4 月に建築事業本部の中に各部門で BIM 推進を担っていた人材を集約したデジタルコンストラクションセンターを設置し、今年 4 月には DX 戦略室と技術研究所を統合した技術戦略室をコーポレート部門に発足させた。

施工現場の 8 割で BIM を活用し、30 年までに生産性を 15 % 向上させる必要性を試算している鴻池組の小川雅史執行役員技術本部長は「東京と大阪の生産支援部門を軸にしているが、昨年ぐらいから地方支店にも BIM 担当を置いて取り組み始め、着実に組織の BIM 対応力を高めている」と説明した。

今年 4 月から ICT 統括センターの BIM 推進室を建築本部の中に移管した奥村組の脇田明幸 BIM 推進室長は「同時に推進メンバーを現業部門にも配置し、各部門の成果を集約する役割として活動を始めた」と強調した。技術部門にあった BIM 推進室を 4 月に発足した集中支援部の中に位置付けた鉄建建設の松本賢二郎 BIM 推進室長は「社内横断的な役割が強まり、設計から施工にデータを連携させる流れをつくるため、ファースト BIM モデルの取り組むも始めた」と語った。

東洋建設の前田哲哉 DX デザイングループ長が「施工のプロセスが図面を詳細化していく流れに対し、設計は推敲する流れになる。最初から  BIM に取り組む設計の流れをきちんと整えることが重要になってくる」と語ったように、各社は設計から施工へのデータ連携についても重要視している。

共通課題としてあるのはフロントローディングの流れをどう定着させるかだ。業務プロセスを清流化する検証に着手している三井住友建設の戸倉健太郎建築本部兼建築 DX 推進部部長は「BIM をコラボレーションのツールとして位置付けることが大切」と説明し、高松建設の澤村等東京本店技術本部 BIM 推進室部長も「施工 BIM を展開する上でフロントローディングの確立を重要視していく」と付け加えた。

オートデスクは、建築設計事務所や設備工事会社、建設コンサルタントなど業界ごとに BIM データ活用の考え方を共有する場としてラウンドテーブルを定期的に開いている。準大手ゼネコンを対象とした今回の意見交換は、設計から施工への BIM データ連携の実現に向けた各社の共通課題が示された。26 年春からは建築確認申請の BIM 図面審査がスタートする。参加者からは「モデルから出力した図面の提出を前提にしていく」との声が上がる。3 年後の 29 年春に控えた BIM データ審査も見据えており、準大手各社の BIM データ活用は新たなフェーズに入ろうとしている。

準大手各社が共通の悩みを共有
準大手各社が共通の悩みを共有

この事例は2025年11月5日から7日までに日刊建設通信新聞で掲載された「連載・BIM/CIM未来図 準大手ゼネコンのBIMデータ活用」を再編集しています。