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現場経験40年の技術者が、50歳からCivil 3Dを始めた!
シニアパワーがBIM/CIM活用を引っ張る玉川組

2018年にBIM(ビルディング・インフォメーション・モデリング)/CIM(コンストラクション・インフォメーション・モデリング)の本格活用を始めた玉川組(本社:北海道恵庭市)は、ベテラン社員が中心となってオートデスクのCivil 3DやRevit、InfraWorksなどのソフトを使いこなしている。その結果、プロジェクトの合意形成やICT土工などで生産性向上の効果が出始めた。シニアパワーがさく裂する同社のオフィスを直撃した。

「Civil 3Dは高齢者向けのソフトですね」

「Civil 3Dは50歳を過ぎてから覚えました。地方ではリアルに参加できるBIM/CIM関係のセミナーはほとんどありません。そこでオートデスクのウェブサイトやRevit関係の本などを見て、独学で使い方を学んでいきました。なにごともあきらめないことが成功のコツですね」と、玉川組 取締役 技術部長の竹樋満寛氏は笑顔で話す。

同社では2018年に会社としてBIM/CIMの活用を本格的に始めた。その取り組みを、竹樋氏をはじめ、8人のメンバーからなる技術課が担っている。その中心となっているのは、シニア世代の社員だ。

玉川組のBIM/CIM活用を推進する技術課
玉川組のBIM/CIM活用を推進する技術課
取締役 技術部長の竹樋満寛氏。土木現場で40年もの経験を持つベテランがCivil 3Dを使いこなす
取締役 技術部長の竹樋満寛氏。土木現場で40年もの経験を持つベテランがCivil 3Dを使いこなす

竹樋氏は主に土木工事で、約40年にわたって現場代理人や監理技術者を勤めてきたベテランだ。以前から無料の2次元CADソフトや画像・イラスト作成ソフト、動画編集ソフトなどを使ってきた。

そしてシニア世代と呼ばれるようになってから、BIM/CIMをマスターし、橋梁上部工や河川の樋門工事などで、発注者との協議などに3Dモデルを作成し、早期の合意形成などに役立てているのだ。

「Civil 3Dは従来の2次元CAD的な平面図や断面図のイメージで3Dモデルを作れるので、高齢者向けのソフトだと思います。」と竹樋氏は、こともなげに言う。

ネットやYouTubeで若手も負けず

建設部技術課で工事長を務める谷口武俊氏は土木技術者として25年目を迎える。途中、玉川組に転職してから9年目のベテランだ。

しかし、谷口氏はまだBIM/CIMという言葉もなかった2005年に、初版のCivil 3D(当時の製品名は「AutoCAD Civil 3D」)を使っていたパイオニアなのだ。

土木技術者のほかCivil 3Dのユーザーとしても超ベテランの谷口氏は「安全管理や工事の説明のために、ザックリとしたCIMを作っています」と語った。その言葉には力みがなく、長年の経験から勘所を得たBIM/CIMの活用を行っている余裕が感じられた。

土木技術者として25年目の工事長、谷口武俊氏。2005年にCivil 3Dの初版が出たときから活用している
土木技術者として25年目の工事長、谷口武俊氏。2005年にCivil 3Dの初版が出たときから活用している
埋設管をInfraWorksでBIM/CIMモデル化し、見える化した例
埋設管をInfraWorksでBIM/CIMモデル化し、見える化した例

一方、若手も負けていない。建設部技術課の藤谷恵音氏は4年目で、CADは社会人になって初めて使った。宅地造成や地盤改良などの現場で少しずつ土木技術者としての経験を積んでいる。

「Civil 3Dはあまり使っていません」と大先輩の前では謙遜する藤谷氏だが、既に河川の完成予想図などを3Dモデルで作っている。BIM/CIMを覚える手段はやはり、本やウェブサイトが中心だが、最近は動画サイト「YouTube」で紹介されているBIM/CIMの活用法も参考にしている。

その姿を、竹樋氏は「若手は覚えが早い」と、期待のまなざしで見つめる。ベテランがBIM/CIMという新しいツールに取り組む姿に刺激を受け、若手も負けじと頑張る好循環の文化が、玉川組のBIM/CIM活用を前進させているようだ。

大ベテランに負けじと、BIM/CIM活用に取り組む建設部技術課の藤谷恵音氏
大ベテランに負けじと、BIM/CIM活用に取り組む建設部技術課の藤谷恵音氏

ICT活用工事で生産性向上、加点評価の成果も

独学と実務での"オン・ザ・ジョブ・トレーニング"を中心とした手作り感あふれるBIM/CIM活用を実践する玉川組は、2020年度には計7件のICT活用工事を請け負うまでになった。この中には、自ら手を挙げてICT活用を行った「希望型」の工事も1件、含まれている。

ICT活用工事では、自社が保有するドローン(無人機)による起工測量や出来形管理、バケット容量0.7m3の3Dマシンコントロール付きバックホーや、レンタルのICTブルドーザーによる施工などを行っている。

施工に使う3Dモデルデータは、技術部の3人の技術者と1人の女性技術者がオートデスクの「AECコレクション」4本を使って社内で作成している。

ドローンによる測量風景(左)。女性技術者がパイロットを務める(右)
ドローンによる測量風景(左)。女性技術者がパイロットを務める(右)
3Dマシンコントロール付きバックホーやブルドーザーを駆使したICT活用工事の現場
3Dマシンコントロール付きバックホーやブルドーザーを駆使したICT活用工事の現場

その結果、生産性向上などの効果も、早速、現れてきた。

竹樋氏は「ICT活用工事では、現場の作業員が従来の工法に比べて少なくなり、生産性向上を実現しました。コンクリート橋脚などの耐震補強工事では、工事の内容や手順をわかりやすく説明するのにも役立っています。その結果、工事成績評価では発注者から加点の評価もいただきました」と振り返る。

耐震補強工事のBIM/CIMモデル。施工者から「わかりやすい」と評価を得た
耐震補強工事のBIM/CIMモデル。施工者から「わかりやすい」と評価を得た
BIM/CIMモデル通りに行われた耐震補強工事の現場
BIM/CIMモデル通りに行われた耐震補強工事の現場

自由な活用ができるオートデスク製品を選択

このほか、同社ではiPhoneを使った鉄筋の3D点群計測や、iPadを使った鉄筋の干渉チェックなど、独自のBIM/CIM活用に取り組んでいる。

iPhoneで計測した点群データをCivil 3Dに取り込み、出来形管理などに活用した例
iPhoneで計測した点群データをCivil 3Dに取り込み、出来形管理などに活用した例
iPadによる鉄筋の干渉チェック。従来の折り曲げ鉄筋の代わりに、定着金具の採用を発注者に提案したときに活用した
iPadによる鉄筋の干渉チェック。従来の折り曲げ鉄筋の代わりに、定着金具の採用を発注者に提案したときに活用した

「わが社のBIM/CIMは、様々な現場で柔軟な活用を行っています。他社の製品だと、一定の型にはまった手順でしか使えないものが多いので自由度が低いのですが、オートデスクのBIM/CIMソリューションは、自由にいろいろなパターンでのモデリングができるのが、選択の決め手になりました。また、製品間の連携がスムーズなのもオートデスクの良さですね」と、竹樋氏は説明する。

最近、社内のBIM/CIM活用を若手社員が中心に推進している会社も増えているが、ベテラン技術者もその気になれば、知識と経験を生かしてさらにパワフルなBIM/CIM活用が可能になることを、玉川組の技術者たちは実証しているようだ。